まるで川底で水に磨かれた白い石のような、
すべらかな丸いバラは、
大きなほうがブルゴーニュで、
小さなほうがスプレーウィットといいます。
スプレーウィットはファインローズさんという産地のバラです。
美しい・・・とつぶやいてしまう。
どうやったらこんな、石のような陶器のような
肌あいとなって、この世に咲いてくるのか、
ふと立ち止まって考えると、本当に不思議です。

 秋の川真白な石を拾ひけり  漱石

市場から仕入れた、バケツ4つか5つ分の花を
テーブルの上にところせましと並べて、
そうして、ひとつのブーケをつくりはじめます。

はじめは、どんなブーケになるのか
自分でもわかりません。
もちろんこういうイメージ、という
新婦様からのリクエストは頭にあります。
でも花を見ながらその花が一番いいところに
おさめていくような作業を、
愚鈍に繰り返して、出来上がってみると
ああこうなったんだ、と思います。
織り上がった布を広げてみるような。
デザインしたのも織ったのも自分なのですが
ひたすら織っているときは
まだわからなかったりします。

作りなれたラウンドでも
使い慣れたバラでも、
本当に、毎回違う。
その驚きは、花のすごいところだし、
怖いところだし、
面白いところだなあ。と、思います。

夏は夏の、秋は秋の、今年は今年の花、
全部、ただ一度です。
「一会ってうまい名前だわー」
などと自分にやや感心。
してるばあいか。
いいえ、たとえ幾たび、「いっかい」さんとか
「イチエイ」さんとか「一絵」さんとか
間違われようと、いいんです。自己満足で。
でも、


Lが違います。

ただでさえ危うい「一会」のあとに、「carpe diem」など
さらにけったいな名前をつけるから悪いのだ、と
解ってはおりますが。
(ちなみにカルペディエムとは
ラテン語で今日を摘みとれ、という意味です。

写真は、市場で、欲しい花を見つけた時の取り置き用の
棚で、一会用に作ってくださった名札なのでした。
中央花きさんへ、
いつも美しいファインローズさんのバラをちまちまと
買わせていただいている分際で、大変申し訳ありません。
でも、こんな美味しいネタを
毎週一人で味わっているのがだんだん苦しくて)

なお、このブーケは
以前の一会の新婦様で、今はスクールの生徒さんに
なった方から、お知り合いをご紹介いただいて
作成したブーケです。
この場からお礼を申し上げます、
本当にありがとうございました。

では皆様今日もおつかれさまでした。

一会