自分より詩的な兄はかつて透き通る秋の空を眺めてああ生き甲斐のある天だと云って嬉しそうに真蒼(まっさお)な頭の上を眺めた事があった。
「兄さんいよいよ生き甲斐のある時候が来ましたね」と自分は兄の書斎のヴェランダに立って彼を顧みた。
『行人』夏目漱石 

今朝、活けこみの帰りに携帯がなって、あわてて車を停めました。
電話が終わってみると目の前は代々木公園。
東京は今日、あまりによいお天気だったので、
ほんの少し散歩がてらに、携帯でバラの写真を撮りました。
ひと時、その「生き甲斐のある秋」という言葉を思い出しながら
売店でスチロール容器に入ったコーヒーを買って、
秋晴れの公園を、ぼんやり眺めていました。

毎週前を通るのに、代々木公園にこうして入ったのは
考えてみるとはじめてでした。
そういう場所はけっこうたくさんあって
多ければ日に5度も足元を通るのに
一度も登ったことのない東京タワー、
何度もブーケを届けているのに
遊んだことがないディズニーシー、
あれこれ納品したことがあるにも関わらず
でかけたことのない六本木ヒルズ・・・

(それはそれでどうなのか?という気もしますが)
たぶん、私個人としてはそうした場所が
ものすごく好き、ではないからでしょう。
本当に好きな場所へは、たぶん誰でも、
一人ででも行くものだと思います。

好きな場所や好きなことを探しだすのは
たぶん、結構、難しいことで、
私の場合「好き、を仕事に」しているのは
ほんとに、すごくラッキーなことだと思うのですが、
それはたぶん小さな「好き」の積み重ね、
あるいはもっと消極的に
「あれよりはこれのほうがラク、
それよりはこれのほうが少しは気楽」という
ただの選択の積み重ねの結果のような気がします。

なので、もっと気楽にあれこれトライしてみると
いいのでは?と、
今、迷っている人に伝えてみたいのですが・・・