「捨てるような花でいいからさ、
ちゃちゃって束ねて持ってきてよ、
おおげさじゃなくてちょっとでいいから」
花の仕事に入ってから少しは長くなりましたが、
今までに2度だけ、
そんな言葉をいわれたことがあります。
いずれも働き盛りの男性でした。
「捨てるような花」とはどんな花なのか、
自問自答しても答えは出ないまま、
花を捨てる、なんてことをしないですむように
花の仕事をしてきました。
仕入れの前に電卓をたたき、
少しでも無駄が出ないように、
でもお客様の要望にちゃんと応えられるように
頭を抱えながら市場をえんえんとうろちょろし、
丁寧に水揚げをし、
短い花にはその丈の花瓶をあてがい、
枝ものはナイフで表皮をはがし、
デザイン上でもなるべくきれいに使い切るようにし、
それでも残った花はバケツを洗って水代えをし、
せめて、一枝でも一花でも捨てる花などないように。
それでも捨てるときはたくさんあります。
仕事なので迷わずに切って捨てます。
でも慣れることはありません。
今日、市場で、入荷日の古い花がすこし安くなっていて
思わず立ち止まって悩んでいたら、
仲卸の方が隣に来てそれを後押ししてくれました。
じゃあ買いますと言ったら、
「花も喜びます」、そういわれました。
そうですねと笑ったら、もう一度繰り返されました。
正面きっての言葉にするとやや照れちゃいますが
なんだかぼんやりと嬉しかったのです。
大事に、使わせていただきたいと思います。

