メコン川クルーズは、ホーチミンに行けば
主要なツアーのひとつ。
写真はほとんど撮れませんでしたが
楽しかったです。
覆いかぶさる緑の中、時折スコールに見舞われながら
手漕ぎの船で進むのは
まるで、テーマパークのアトラクションのようでした。

思ったとたん、おかしな話だと思いました。
こちらが本物のはずなのになぜテーマパークを連想するのか。

日常、花を挿していると、
「まるで、造花みたいにきれい!」
と言われることがあります。

長い間、その表現がいまひとつよくわからなかった。

でも本物のジャングルクルーズを体験しながら
まるでアトラクションのような錯覚を引き起こす自分も、
たぶん同じ感覚です。
こっちが本家なのに、なぜそれを似せて造られた人工物を
思うのだろう。
船を下りてからずっと考えていましたが、
おそらくは
造花は、人の思う「花」の「印象」なのだろう。

最近の造花はとてもよくできていて、
その開き加減といい、発色のよさといい、
反り返った花びらに水滴がついているものさえあります。

「花」とはこうあってほしい。
という、理想の体現。

裏を返すと、花の生け手側である自分が
いつもいつもは、その理想に追いつけていない。
せっかくの生花を、人のいう理想の花にして
見せては差し上げられない。

「造花みたいにきれいだ」という言葉は
そういう不足の裏返しなのかもしれない。
と、思い至りました。

  「さて、花は造花程口がきけない」

という中原中也の詩を思い出します

口がきけない花を
造花ほどに造花以上にその美しさを
引き出す仕事が、できるだろうか、
そんなことを考えるベトナム最後の夜でした。

あっというまですが明日は帰国、
明後日月曜には東京に戻ります。
メールのほうがつながりにくく、
お返事が送れておりますことを
どうかご容赦ください。

では皆様今日もお疲れ様でした、
こちらはもうすぐ夜の0時になるところです。