先日中途半端に終わった水揚げの話の続きです。

その前にひとつ追加の弁明文を。
前回掲載した水切りの写真では葉をきれいにとっていませんが
一会の場合、花屋の店舗ではなくアトリエのため
用途が最初から決まっていることが多いからです。

ブーケ用や装花用の場合も、
花首だけ使うこともよくあるので
茎の葉やトゲはもうとらずに手間を省くかわり、
最初から短くして水を吸わせます。

バラの水揚げ処理では
トゲ取りという厄介な仕事がありますが、
機械でとるところもあるし、
専用のトゲ取り用のハサミを使うこともあります。

少し丁寧な花屋さんになると、
トゲ取り器でさえ茎をいためるといって
ナイフやはさみの背で一本ずつとることも。

一番丁寧なのはやはり手でとることで、
一会の場合、ナチュラルステムブーケ(茎の見える形のブーケ)に
使うバラは、手やはさみでひとつずつトゲをとります。

『庭師の知恵袋』という、
ある庭職人の方が書いた園芸指南書に、
植えている松が弱ったら、スルメの煮た汁を根元に施す、
というような庭師の間で語り継がれる
言い伝えの話が出てきます。

 今の時代に、マツが弱ってきたからといって、
 まさかにスルメをやる庭職はいないだろうが、
 これらのいい伝えは、木を枯らしてはいけないという、
 木に対する私らの愛情だったのだろう。
 先人はいいことを教えてくれている。

(『庭師の知恵袋』豊田英次 編  講談社 1989年6月  
以下括弧内は引用)

言い伝えはさまざまで、
たとえば、「ナンテンに実をつけさせるには茶がらがいい」
たとえば、「タケの肥料にはタケの葉が一番」
たとえば、「ソテツの根元には釘を埋めておくといい」。

 「思いが余って、根元の幹に釘を打ちつける者もいるが、
 この思いもソテツには通じるらしく、
 何もしないで植えるよりははるかによく育つ。」

花屋の水揚げもこれに似て、
しっかり水を吸って生き生きしてほしい、
長持ちしてほしい、
つぼみもきれいに咲いてほしい。
そういう思いで施される処置は
いずれも花への愛情です。

しかし自分の見解と違うと
これが紛争の種になることも。
・・・が、また時間切れです。

次回はカレルチャペックを紹介しつつ
この続きをまた書きます。

写真はナチュラルステムブーケ。
横から撮るとこんな感じです。