今回、なんでフィレンツェにいったかというと。


随分前に読んだこの本*で、
ボッティチェルリの「春」には
何百種類もの花が描きこまれていて、
かつその多くが、実際にフィレンツェの春に咲く花だ、
と知って以来、ずっと長い間、
一度本物を見てみたかったのでした。

本当は、4月に行けば本当に花が咲いている光景も
見られたのでしょうが、そういうことを言っていると
いつまでたっても行けないので、えいやと行く。

描かれた植物の中には、
実際には花と葉が一致しないものも
多く、摘んできた花を写生しつつ、
想像や手近にある葉を組み合わせたのだろうと
いうことです。

なんというか時々緻密で時々雑。
しかし、花という名の花はない、ということと、
どこか通じるような気がします。

描かれているのは春、
描かれているのは花。

2月、まだ芽吹く季節前のフィレンツェで
陽の当たるこの斜面だけが、
一足早く春でした。

東京も今日は良いお天気です。

*朝日新聞日曜版「世界 名画の旅3」イタリア編